死ぬまでにせめてあと1000冊は読みたい

読書記録です。アラ還の2020年5月からカウントを始めました。果たして1000冊までたどり着けるのか

9冊目は『沈黙のひと』小池真理子

私の父は今年88歳になり、現在初期?のアルツハイマーです。病気は他にも色々持っていますが、まだ毎日一人で散歩に行けるくらいには元気で、母と二人暮らしをしています。

 

そのため、認知症の父(夫)の小説 長いお別れ (中島京子・文春文庫)もとても興味深く読みましたし、最近は介護系のエッセイなども気になって仕方がありません。

 

今回の沈黙のひと (文春文庫)小池真理子さんの小説はかなり前に柩の中の猫 (集英社文庫)を読んで以来です。

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帯の文句に引き寄せられます

多分、誰かの感想を読んで購入したと思うのですが、私と年が比較的近い女性が主人公で、難病で段々話ができなくなっていった高齢の父が亡くなり、残されたワープロの文書を開けると…という先を読みたくなる展開で進みます。そしてまた、父との過去・父が介護施設に入ってからのこと、更に死後にわかったことからの新しい人間関係など、中には少し美しすぎると思われる父と娘の関係もありました。

 

頭はボケていないのに、言葉が発せられない苦痛は想像するだに辛いものがあります。老いれば、皆老いぼれていくのでしょうけど、どんな老いぼれでもかつて輝いていた時はあります。そして、親と子の年齢差があればあるほど、子どもは輝いていた時代の親を認識できずに終わるものです。そのギャップを、この本では父が残した文書を通して埋めていくのです。

 

2011年から2012年にかけて書かれたこの小説では、ワープロが重要な小道具になっています。当時は中古ならまだ何とかワープロがあったのでしょうか。ワープロはプリンターが内蔵されているところがパソコンとは違います。一台の機器で日本語の印刷ができてしまうという今振り返っても素晴らしい機械だったと思います。

 

またこの小説は第47回/1993年の吉川英治文学賞を受賞しました。私は吉川英治の本を読んだことはありません。基本的には大衆文学の賞のようです。過去の受賞作品を見ると、何冊か読んだ本があり何となく傾向はわかりました。

 

さて、今回も知らない言葉が一つありました。それは「胴間声(どうまごえ)」です。意味は「調子はずれの濁った太い声。」(goo国語辞書)とのこと。これが胴間声というのを音で聞いていないので、どうしてもイメージできませんでした。

 

それから、文中に短歌が幾つか差し挟まれているのですが、それがとてもいい歌なんです。とても上手いなと思っていたところ、あとがきにその説明がありました。それも最後の楽しみになるのではないかと思います。