4冊目は『査問』
夫は買った本を処分することなく溜め込む人なのですけど、私が私の本用に少し本棚を空けてほしいと言ったら、ゴールデンウィークに書棚の整理をしてくれまして、要らない本を一箱分出してきました。
私と夫は本の好みはあまり合わないのですが、ちょっと覗いてみて何だろうと手に取ったのがこの本でした。
夫の本は単行本ではなくちくま文庫でした。夫も古本屋で買ったようです。
これは日本共産党のある事件のルポで、その当事者として、査問という名の14日間にわたる拘束や、その後について書いたものです。
その事件は1972年5月に起きたのですが、この本は1997年に書かれています。その事件が査問された人達に与えた影響は大きく、ご本人もこのことを書くのに25年がかかったのはなぜかと自問していました。
査問とは悪く書けば吊し上げです。分派活動をしようとしていただろうという疑いの下に追求されるのですが、それは最初からストーリーが決められていて、冤罪にもかかわらず覆すことはできずに最後は自己批判をして反省文を書かされています(検察による冤罪と似たりよったり)。
なぜそうならざるをえないかと言うと、この査問を受けた人たちは皆組織で専従で働いていた人たちで、それまで外の世界とは別に生きており、共産党から出るということができないと考えていたからです(それ故に本人たちが受けた傷は大きかったわけですが)。
この1972年という年は2月にあさま山荘事件が起き(私は子どもでしたが鉄球で山荘を壊すシーンはよく覚えています)、その後に連合赤軍によるリンチ殺人事件(山岳ベース事件)が明らかになった年でもありました。
つまり、そういう時代だったとも言えます。
著者の川上さんはもうお亡くなりになられています。
私から見ると一つの歴史書のような感じがしましたが、大変面白く読めたことは確かです。それにしても、あるイデオロギーの下に作られた組織というのはその主義が何であれ、恐いなとつくづく思います。
前に読んだこちらのコミックエッセイが思い出されました。
これは、ヤマギシズムの「村」で育った著者の実話ですが、これも中々恐い話でした。オススメです。