8冊目は志賀直哉『小僧の神様』
志賀直哉は多分、中学とかの教科書で読んで以来でしょうか。『城の崎にて』は読んでいると思うのですが、今回のこの短編集
にも『城の崎にて』が入っていて、しかし読んでみても全く記憶にはありませんでした。あと書きに全11篇の話について、どういうきっかけで書いたのかと、書いた年月が記されています。1912(明治45)から1920(大正9)年までに書かれたものとのこと。
今回この短編集を手にした理由は『流行感冒』を読むためでした。この『流行感冒』(1919年3月)は、1918年(大正7年)-
そしてそんなに流行っているのに、村では運動会や芝居が行われ、感染者が出てしまったり、そんな催しには行かずに気をつけていたのに、下火になってくると油断して本人が植木屋から感染し、家族みんなが罹ってしまっています。
この小説の本筋はそこにあるのではなく、女中のことなのですが、当時の感染症の様子がそれなりにわかってある意味貴重な話ではないでしょうか。
全11篇を通して思ったことは、志賀直哉の文は平易でわかりやすいということです。
わかりにくい言葉も一つだけでした。
・「右顧左顧」これには「とみこうみ」とルビがふってありました。これの読みは「うこさこ」だと思ったのですけど、「とみこうみ」で検索すると漢字は「左見右見」と出てきました。意味は同じなのかと思います。
また、このスペイン風邪を題材にした小説は、他に武者小路実篤の『愛と死』があります。