死ぬまでにせめてあと1000冊は読みたい

読書記録です。アラ還の2020年5月からカウントを始めました。果たして1000冊までたどり着けるのか

14冊目は『死に山』-世界一不気味な遭難事故

基本的に翻訳物はあまり好きではありません。それは日本語がどうしても不自然だからです。私は日本語の添削や校正も仕事にしています。欧米人の書いた日本語の文章を「日本語として不自然にならないようにしてほしい」などと依頼されますが、まず無理なのです。なぜなら彼らの書く日本語は、例え上手であっても、必ず結論から入るからなのです。日本語はまず理由を述べて最後に結論を書くのが普通です。結論から入られると文章の落ち着きが悪くて仕方がありません。添削なんて無理で、一から書き直したくなります。

 

なのに、この『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』

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351ページありますが、サクサクと読めます。

をどうして読む気になったかと言いますと、まずもちろんノンフィクション物が好きというのがありますが、信頼のおける知人がこれを読んで、好意的に評価していたのが大きかったです。それに旧ソ連時代の1959年の未解決事件。旧ソ連と言えば、秘密の匂いが漂います。それから作家の伊東潤さんもこの本を高く評価していました。

 

著者はアメリカ人です。この大学生グループの遭難死事件に惹きつけられ、解明するためにお金をはたいてロシアに2回渡航しています。そして2回目には冬のさなか、現地を訪れているのです。その熱意があったからこそ書けた本なわけです。

 

さて、この本は3つの時間帯を平行して順に追う形を取っています。すなわち第一に学生たちのグループが出発してから遭難するまでの行動について、第二に捜索や捜査が行われていく過程について、そして第三に作者が謎を追究していく過程です。

 

読んでいて難しかったのは、馴染みが薄いロシア人の人名が多数出てくることです。しかし、最後に気づいたのですけど、巻末に登場人物の一覧がありました。最初に気づけばもっと読みやすかったとは思います。

 

結論は、そういうことだったのかと一応納得できるものになっています。この本を書くことによって結論を初めて公表したのかと思いますが、それ故、その結論に対する評価がわからないことが少々残念です。

 

また別な視点から見れば、旧ソ連下の生活の一端がわかったりして、そういう面でも楽しめるかと思います。

 

しかし、子どもの遭難死の原因がわからないまま亡くなられた親御さんなどのことを考えると胸が痛みます。この本の結論が正しければ、当時では解明が難しかったのは事実なのですけど。

 

それから日本語もとても読みやすかったことを付け加えておきますね。

 

p.s.たまたまこの事件に関する新しいニュースが昨日入りました。読み終わってから見られた方がよろしいかと思います。→ニュース記事

こうなると何が正しいのかは相変わらずわかりません。