死ぬまでにせめてあと1000冊は読みたい

読書記録です。アラ還の2020年5月からカウントを始めました。果たして1000冊までたどり着けるのか

12冊目は桜木紫乃『家族じまい』

桜木紫乃さんの小説は三冊目です。2013年上半期の第149回直木賞を受賞した

『ホテルローヤル』 (集英社文庫)、と『裸の華 』(集英社文庫)なのですが、ワタシ的にはホテルローヤルはあまり好みではありませんでした。一冊目がそうだと中々二冊目に手を伸ばさないのですが、『裸の華』を夫が買ってきて、結構面白いと言うので、読んでみたところこれが中々良くて印象に残ったのです。初めての作家さんは一冊で評価を決めてしまうのは危ないですね。

 

そしてこの『家族じまい』

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帯のデザインがいいですね

もうこれは、帯の「ママがね、ボケちゃったみたいなんだよ」に掴まれてしまいました。その後、書店の店頭で冒頭部分を確認してから購入しましたが。

 

ato1000satu.hatenablog.com

でも書きました通り、認知症小説にはどうしても触手が伸びます。

 

この小説は五章からなる、連作小説です。各章、別々の女性が主人公になっています。認知症の女性とその夫が第二章以外には出てくるので、ちょっと第二章だけは外れた感じです。どうせなら、第二章にも関わってくれた方が良かったかな、とは思います。

 

桜木さんの小説は読んだ3冊共、北海道が舞台です。北海道に対する思い入れが強く出ています。北海道は不思議な自治体です。他県に比べて面積が異様に広く、他県と気候も全然違うし、冬の寒さが特段に厳しい。そしてアイヌ語に由来する独特の地名。

 

各章の主人公は、親子関係がうまくいっていなかったり、夫婦関係も何となくしっくりしていなかったり。そういううまくいかない関係がそれぞれジメジメとは違う感じで書かれています。みんな同じ道内に住んでいるけど、距離がある。距離があることで救われている面もあるのでしょう。北海道の人でなければわからない距離感でもあると思います。

 

日々、みんな何かしら家族関係に悩むことはあるかと思いますが、そういうのは誰にでもあることだと思わされます。

 

結局、大人と言っても完全な大人などいるわけがなく、どこか屈折したものを抱えながらみんな生きているのではないでしょうか。

 

人生、色々な諦めが必要だし、諦めれば楽になることもあるなと思いました。