死ぬまでにせめてあと1000冊は読みたい

読書記録です。アラ還の2020年5月からカウントを始めました。果たして1000冊までたどり着けるのか

23冊目は芥川賞受賞作『破局』遠野遥

これも『首里の馬』と同じく、文藝春秋9月号で読みました。

 

破局

破局

 

 文藝春秋に掲載されていた著者のインタビューに、「主人公が気持ち悪い」って言われていると出ていましたが、私は別にそうは思いませんでした。更に、私は普段若い人の話には入っていけない感じがあるのですが、そんなことなくすごい近い話のように読んでいました。

 

この小説の登場人物は、主人公をはじめ、多くが慶応大学の学生です。そしてもちろん著者も卒業生。日吉や三田といったキャンパスも出てきます。私も35年前は同じ大学の学生でした。そのことも、近い感覚を持てた一つの要因かもしれません。もちろん、今と35年前とはかなり違うはず。三田の4階にカフェテリアはありませんでしたし(本当にあるのかわかりませんが)。

 

読みながら、自分が大学生の頃に見た「ヒポクラテスたち」(大森一樹監督)という映画を思い出していました。その映画は医学部の学生たちの話でしたが、大学生の実態ってそんなに変わっていないと思います。みんな社会に出る前にちょっと馬鹿やってあがいているところなんか。

 

主人公の男子学生は体を鍛えている若者。当然のように性欲も強い。でもまじめに勉強して、公務員を狙っているし、本人としては他者を尊重している。ちょっと癖のある人物として登場する膝君なんかも、ああ、こういう人っているよねと思いましたし。

 

真面目に生きているはずの主人公は、ちょっとしたタイミングのずれ、ちょっとした判断ミス、ちょっとした意地悪、それらによって歯車を狂わされます。順調なレールを外れるというのは、誰にでも起こりうることでしょう。

 

唐突な感じの挿話もありますけど、それはそれで悪くなく、この小説も映画にしてもよいかもと思いました。まあ、でも私が思い浮かべているのはやっぱり昭和の終わりの頃の日本映画なんですけどね。