死ぬまでにせめてあと1000冊は読みたい

読書記録です。アラ還の2020年5月からカウントを始めました。果たして1000冊までたどり着けるのか

25冊目は『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』花田菜々子

今回から、私基準の面白度を星で表そうかなと思います。あくまで私が面白いと思ったかどうかなので、多分純文学系とかは低いと思いますし、旅行記・ノンフィクション系は高いと思います。さて、今回はそのノンフィクション系でした。

星の数は★★★★☆ということで、4つです。

 

この長いタイトル

出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと (河出文庫)

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花田菜々子さんは、現役の書店員さんです。

この本は単行本で出た時から話題になり、新聞の書評欄でも取り上げられていて、その時から気になっていました。私の夫も同時に気にしていたので、夫が買うかなーと思ってそのままにして、そのままになってしまっていたのです。

 

そして文庫本になって、店頭で見かけてちらっと立ち読みをし、「まあいいか」と買わなかったのですけど、実は夫が文庫本を買っていたことが最近わかり、取り敢えず読み出してみたら、軽い内容であることもあり、そこからはほぼ一気読みでした。

 

元々のこの本に対する興味は、一体どんな本を勧めたのだろうというところにあり、その勧めた本の中で私も面白い本に出会えるかなという期待だったのです。しかし、読み終わってみれば結果的に読んでみたいと思った本はゼロ。それはそうですよね。その人に合った本を勧めているわけなのだから。

 

そしてこの本の面白さはそこじゃなかったのです。著者は夫ともうまくいかず、大好きだったヴィレッジヴァンガードの仕事にも悩み、悶々としている時にある出会い系サイトに登録して、多くの人と出会って人間関係が広がり、遊び友達が増え、性格までもが変わっていくという体験をします。つまりメインテーマは変わりゆく著者の人生なのです。

 

私も若い時にこの本を読んでいたら、影響を受けたかもしれません。ただ、昔のヴィレッジヴァンガードが好きだった彼女と私の感覚は多分違います。私が最初に入ったヴィレッジヴァンガードは30年近く前の吉祥寺店でした。面白いことするなあとは思いましたが、私の感性には合いませんでした。私は手応えのある棚を作っている本屋が好きです。ヴィレッジヴァンガードを本屋として見ると、今一つだったのです。

 

しかし、私もどんな本をオススメされるのかには興味があります。是非著者と話をしてオススメされてみたいとは強く思いました。

 

 

 

 

24冊目は『アフリカ旅物語 北東部編』田中真知

田中真知さんの本は、『たまたまザイール、またコンゴ』、『孤独な鳥はやさしくうたう』に続いて3冊目です。

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帯の推薦文が辻邦生氏!

1994年に出た古い本です。そしてこの本の出版社、凱風社は倒産してしまい、当然ながら絶版です。私も古本で入手しました。田中さんがアフリカの北東部、エジプト、スーダンエチオピアケニアウガンダを旅した時の旅行記。古いものは1985年、あとは1990年から93年。相当に昔です。

 

私がアフリカを旅する可能性は殆どありません。まあ、ピラミッドやスフィンクスは見てみたいと思いますが、限度はそこまで。そこから南に行くことは無いでしょう。

 

さて、30年も前のアフリカの話です。相当に貧しい国々。だけど、他では見られないものが見られるところでもあります。そんなことがわかる本です。そして今では一体どうなっているのかが大変気になります。

 

この本でもスーダンに5年後に再訪した話が出ています。5年である地域が全く違う世界になってしまっているようでした。政情不安や紛争、日本では普段全く考えられないことですが、アフリカではしばしば起きます。そして今はコロナウイルスも。

 

絶滅危惧種のマウンテンゴリラの話も出ています。ちょっと調べたら日本からマウンテンゴリラに会いに行くトレッキングツアーもあるんですね。そのお金がマウンテンゴリラの保護に回るようです。何だか少し引っかかりますが、致し方ないです。

 

さて、次は中南部編も読みます。

 

 

 

23冊目は芥川賞受賞作『破局』遠野遥

これも『首里の馬』と同じく、文藝春秋9月号で読みました。

 

破局

破局

 

 文藝春秋に掲載されていた著者のインタビューに、「主人公が気持ち悪い」って言われていると出ていましたが、私は別にそうは思いませんでした。更に、私は普段若い人の話には入っていけない感じがあるのですが、そんなことなくすごい近い話のように読んでいました。

 

この小説の登場人物は、主人公をはじめ、多くが慶応大学の学生です。そしてもちろん著者も卒業生。日吉や三田といったキャンパスも出てきます。私も35年前は同じ大学の学生でした。そのことも、近い感覚を持てた一つの要因かもしれません。もちろん、今と35年前とはかなり違うはず。三田の4階にカフェテリアはありませんでしたし(本当にあるのかわかりませんが)。

 

読みながら、自分が大学生の頃に見た「ヒポクラテスたち」(大森一樹監督)という映画を思い出していました。その映画は医学部の学生たちの話でしたが、大学生の実態ってそんなに変わっていないと思います。みんな社会に出る前にちょっと馬鹿やってあがいているところなんか。

 

主人公の男子学生は体を鍛えている若者。当然のように性欲も強い。でもまじめに勉強して、公務員を狙っているし、本人としては他者を尊重している。ちょっと癖のある人物として登場する膝君なんかも、ああ、こういう人っているよねと思いましたし。

 

真面目に生きているはずの主人公は、ちょっとしたタイミングのずれ、ちょっとした判断ミス、ちょっとした意地悪、それらによって歯車を狂わされます。順調なレールを外れるというのは、誰にでも起こりうることでしょう。

 

唐突な感じの挿話もありますけど、それはそれで悪くなく、この小説も映画にしてもよいかもと思いました。まあ、でも私が思い浮かべているのはやっぱり昭和の終わりの頃の日本映画なんですけどね。

22冊目は、芥川賞受賞作『首里の馬』高山羽根子

8月は6冊。私としてはかなりいい感じです。

 

さて今回、22冊目と書くのは少し抵抗がありました。この小説は単行本で出ていますが、私が読んだのは、芥川賞受賞作が掲載されている文藝春秋9月号です。でも、ここはちょっとお許しいただきましょう。

 

首里の馬

首里の馬

 

 芥川賞は純文学の賞です。私は純文学は結構苦手なんです。でも、芥川賞受賞作はまあ一応読もうかな、という感じで文藝春秋を買います。

そしてまた文藝春秋に出ている選評が、芸術はかく語りきという感じで小難しいことが書いてあったりして、ますますわからなくなります。

 

首里の馬』は、とっても普通な感じで始まりますが、途中から段々おかしな話になってきます。登場人物は基本的に孤独な人たち。主人公も孤独でひっそりと生きている。そして孤独な人相手に不思議な仕事をし、同時に意味があるかどうかもよくわからないボランティアの資料整理を長年行っている。そこに現れる馬一頭。

 

資料館は持ち主の死と共に無くなってしまうが、主人公の彼女は資料をデータ化して保管を行う。それが彼女が行ってきた整理の集大成。そして馬は彼女を表社会に連れ出すきっかけになっているのかもしれません。

 

その時は価値があるのかわからない資料も、時が経てば価値が出てくることもある。資料は保管すべきですよね、国家も。

 

 

21冊目は、問題作『伯爵夫人』蓮實重彦

最初に出た時から話題になっていた『伯爵夫人』(新潮文庫)。

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解説を含め、222ページですけど、中身は濃厚

帯にある通り、第29回三島由紀夫賞を受賞し、ずっと気にはなっていたのですけど、ためらっていたところ、年上の友人に「すごいわよー」と勧められ読んでみることに。

 

蓮實重彦さんと言えば、元東大総長で、文芸評論家で、映画評論家。その中身までは知りませんが、その方が80歳で書いた過激な下ネタ満載の小説がこれです。

 

舞台は1941年12月。主人公は旧制高校の学生。時代と年齢からすると、蓮實先生がそのまま重なるわけではないようです。本は薄いのですが、ページを文字が埋め尽くしています。会話を「」に入れずに、地の文にそのまま書いてあるので、息もつけずに会話が続いていく感じです。

 

私は三島由紀夫の小説も3冊ほどしか読んだことがないので、わからないのですが、この小説の下地になるものが実はあるのかもしれません。

 

しかし、80歳でこんなにエロい話が書けるのでしょうか。ずっと心に秘めていたものなのか、過去の自分を思い出したものなのか。ちょっと辟易するほどです。

 

さて、80年も前を舞台にしているので、知らない言葉や人物も出てきました。

代赭色(たいしゃいろ)ー赤土色のようです。

ルイーズ・ブルックスアメリカの女優で「元祖ボブ・カット」と言われているようです。 

・膺懲(ようちょう)ーうちこらすこと。征伐して懲らしめること(goo国語辞書)

・佩剣(はいけん)ー帯剣。刀剣を腰につけること(コトバンク

 

読み終わって頭に残るのは「ぱふりぱふり」という擬音語です。これから回転扉を見ると、頭に流れそうです。

 

因みに三島由紀夫賞の過去の受賞作は

www.shinchosha.co.jp

にあります。何と他には一冊も読んだことがありませんでした。今年の候補作には芥川賞を受賞した『首里の馬』(高山羽根子)が入っていますね。丁度、今、読んでいるところです。

 

20冊目は『日本語教育ガイドブック(上)』

前にも書きましたが、私は新米に近い日本語教師なので、日本語教育関連の本をちびちび読んで、お勉強しています。今回は、成長する教師のための日本語教育ガイドブック〈上〉(川口義一&横溝紳一郎著 ひつじ書房

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305ページの内、60ページが参考文献のリスト

 

これを購入したのは、本当に日本語教師を始めたばかりの頃で、教員養成講座に通ったわけでもない私は教案作りに悩んでいて、教案が少しでも書いてある本なら買ってしまっていました。この本には教案サンプルはちょっとしか出ていないのですけどね。

 

対話形式で書かれた本で、とりあえず読みやすいのですが、著者が研究者なので、色々な研究の結果が多数引用されています。

 

なるほど、こういう方法もあるのかという点では参考になるかと思います。

【上】とある通り、【下】もあるのですが今は【下】はパスします。他にも貯め込んだ日本語教育関係の本が沢山あるものですから。

19冊目は、またまた冒険物『ダリエン地峡決死行』北澤豊雄

こちらも、『たまたまザイール、またコンゴ』と同じく、こちらの記事で紹介されていた本です。

ダリエン地峡決死行 (産業編集センター・わたしの旅ブックス)

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税別1,100円とお手頃なためか、中は白黒写真なのがちょっと残念。

帯に書いてある通り、コロンビア・パナマ国境にあるダリエン地峡という密林地帯をコロンビアからパナマに向けて徒歩で越えたノンフィクションです。

 

密林には猛獣もいるし、ゲリラもいる。そして北澤さんは冒険家でも探検家でもないし、特段体を鍛えたアウトドア派というわけでもなさそうです。そそのかされて、すっかりその気になって行ってみれば、という感じで始まります。まあ、スペイン語ができるので、現地の人との意思疎通は問題無いのですが。

 

私も、旅や冒険のノンフィクションを色々読んできました。中には生きて帰れなかった人もいますが、この方の場合も一歩間違っていたら、運が味方してくれなかったら、そうなったかもしれないというのは否定できません。

 

もちろん、いい人と巡り会えたというのはありますし、そういう人を引き寄せられる人柄もあるとは思います。でも、本当に「ラッキー」だったと思わずにはいられないです。

 

現地の大使館というのも、こういうある意味遊びで来た人たちの面倒をみることになるわけですから、ご苦労なことです。

 

この本は第16回「開高健ノンフィクション賞」の最終選考に残った本だそうです。だから、本当に読む分には面白いです。でも、「良い子は決して真似しないように」とは言いたいですね。